JH Audio・Layla 向けに、200 ケーブルで製作して頂けないか?と相談して約 1 ヶ月。 太いケーブルをはんだ付けするには、あまり狭く小さな樹脂部品という極めて悪条件の下、サードパーティー製コ ネクタに綺麗に収まった本品を受け取りました。他社リケーブルも数本所持しておりますが、やはり美しい!隅々 まで職人の矜持を感じる逸品であり、物造りに興味のある方なら音を出す前から楽しめます。 ケーブルが太く重いので、ポータブル使用に少し不安もありましたが、イヤホン筐体が大きく耳介で支えられる事 と、その重さが逆に Shure 掛けを安定させるという怪我の功名から、むしろ安定した使用感となりました。ただし、 今回はプレーヤー側を 20㎝短くして頂いたので、その分軽く仕上がっている事も作用しているでしょう。 肝心の音質については、AK320 直挿しの Layla+コンプライでのインプレッションになります。 まず結論として、ケーブルが存在しません。 評価として、●●は高域が素晴らしい!▲▲は艶めかしい!等とキャラクターを評されるのを目にしますが、この ケーブルを評価するのは非常に難しく、「素晴らしい」としか表現ができません。なぜなら、特徴が無く、何がどう だ!という表現が出来ないのです。そもそも、キャラクターがあるという事は、何かを削って他を際立たせている事 に他なりませんから、無減衰を謳う NIDEON 様のケーブルに、評すべきキャラクターが無いのは当然であり、減 衰が無い証左とも考えられます。 ただ言える事として、このケーブルは「生音」が出ます。以前は音楽を嗜み、スタジオでの録音も経験しています が、PA から出る音その質感を感じます。表現として自然に伸びる高音や低音といった言葉になりますが、微細信 号 (減衰で消失 しやすい )であ る倍音まで正確に伝送 してい る と感 じ られます。 AKG・TheTUBE や NEUMANN・U47 等の聴き分けが出来る事からも、忠実性の高さが伺えます。 また無減衰の恩恵は、位相、ノリ、スピード感にも表れています。 Layla はスピード感が無い等と言われる事もありますが、このケーブルを使用する限り、それを感じる事はありませ ん。例えば、カホンと電子ピアノの 2 ピースバンドがおりますが、他社ケーブルではカホンがミリ秒遅れるように感 じるのです。音楽として成立していますが気持ち悪さがありました。しかし、このケーブルではユニゾンします。そ の理由として考えられるのは、電子ピアノは一気にピークに達するが、カホンは中低域かつ手で叩く為に比較的 緩やかにピークに向うので、減衰のあるケーブルでは出音のタイミングがずれて感じてしまう…と考えており、これ も減衰が無い証左と考えております。 また、非常に興味深い事に、今回のケーブルには○○のセールスである低音調整無しで全域 1 本のケーブルで 送っていますので、純正、社外品 MAX 設定だとボワつく、高音を食う等と言われており、完全ストレートでは相当 …と思いきや、引締まり中身の詰まったムチムチ低音なのです。膨らまないけどマッシブな低音も出ますし、チェ ロの繊細な胴鳴りも再現してくれます。倍音は、低音の輪郭に大きく関わると思いますが、この輪郭が間違いなく 増えている情報の形を整えています。 そして、しっかりと高域が出ているが痛くないのも当然だと考えております。①音楽は方形波でありピークもディッ プもある②エンジニアは不快な音を作らない③アナログは引き算しかできない。これを踏まえ、不快な音質である =バランスの崩れたピークがある=消えた音がある、と考えており、減衰の無いケーブルからは心地良い音が出て くると考えている為です。 最後に欠点…と言いますかビックリした事が 1 点ありまして、使い始めて 30 分後、急に煩く感じ始め、音像がぐ ちゃぐちゃなってしまいボリュームを下げました。その 2 時間後、文字通りに霧が晴れるように、数分で音像がクリ アに再構築されてきたのです。これは、エージングでもオカルト、思い込みでもなく、考えられる事は「脳」です。使 用直後は興奮が先に来る→30 分後、冷静に聴き始める→情報量が一気に増大した為に脳が混乱して疲弊→2 時間後、この情報量に慣れる…と考えており、今では心地良さに「そうこれ!この音!」とハイテンションで音楽を 楽しんでおります。