はんだ理論(3)

 金属結晶の表面状態 金属が結晶になると各々の原子は安定的な位置関係で収まり、その収まった形が結晶系 であることが分かりました。また、金属結晶同士が結合する場合は、結晶内部の原子では なく、前項の図 2 に示したように結晶表面の原子が結合の役目を担います。

 結晶表面の原 子が結合に関係するのは位置の関係だけでなく、原子の結合のエネルギー状態が関係して きます。 実際の金属結晶は 3 次元に広がっていますが、説明を簡単にするために、結合に関与す る手を 4 本持つ金属原子があるとして 2 次元で考えます。

 図 4 にこの金属の固体内部にあ る原子(A)と表面の原子(B)の結合状態のイメージ図を示します。

 固体内部にある原子(A)を見ると、4 方を原子に囲まれていて、結合に関与する 4 つの 手は、まわりの 4 つの原子と全て結合しているので安定な状態です。それに対し、固体表 面にある原子(B)は左右と下の原子の 3 つと結合していますが、上のほうは結合できる原 子がなく、結合に関与する手は 1 本余ったままで(B)原子はどこかの原子と結合して安定 なエネルギー状態になりたがっている活性化した状態です。結晶表面はこの結合に関与し ていない手を持っている金属原子で構成されていることになります。

 そのために、別の金属原子が近づいた場合、図 5 に示すように結合の手が 1 本余った結 晶表面の原子同士が結合することになり、結晶表面原子のエネルギー状態は安定になりま す。

 ただし、固体の金属表面の原子は「はんだ付け理論(その 2)」の図 3 のように平面では ないためにすべての原子ヲ結合させることは難しいです。そのために固体の金属原子同士 を結合距離まで近づけるために、溶融させたり圧力を加えて原子を移動しやすくして、離 れている原子を結合できる距離まで近づける工程がとられます。 また、結合に関与していない金属表面の原子は何かの原子と結合して安定なエネルギー 状態になろうとするので、空気中の酸素と結合して酸化して安定化している場合が多いで す

 

※1. そのために、はんだ付けする時は、「はんだの科学(その 2)」で説明したようにフラ ックスで金属表面の酸素を還元して金属表

   面の酸素を取り除いて、金属表面の原子を活性 化してから別の金属と結合させる必要があります。(図 6 参照)

 ※ 1. 固体表面は活性化しているために近くにある原子と結合しやすい状態です。そのために空気中の 活性度が高い酸素と結合して酸化

   しやすい状態です。もし、金属が非常に微細になると金属の表 面積が大きくなるので、体積あたりの酸化できる面性が大きくなり

   ます。

   酸化は発熱反応を伴い ますので微細な金属粉塵が舞うと表面積分の酸化反応が短時間で起こり、一瞬に大きな発熱が発 生じます。

   これが粉塵爆発の原因です。(炭素や有機物などの金属以外の元素でも粉塵爆発は発生 します。)